海外アニメ番組『陽気なルルちゃん』について

70年代後半から80年代前半にかけて『陽気なルルちゃん』という名の海外アニメ番組があったようです。

うわー、リトルルル!

25年くらい前に40年代の古いのやってた。(年がばれますね)
「陽気なルルちゃん」てタイトルで、スパンキー(ロバ?)とか
人形アニメのジャスパーちゃんとかかしちゃん(?)とかと
3本立だった覚えが。
再放送してないかなー。CNで今やってるのは全然違う。

海外アニメやカートゥーンについて語ろう

 

昔のアニメの質問です。昔のアニメに「リトル・ルルとちっちゃい仲間」というのがありましたが、その他に洋物で、「陽気なルルちゃん」というのもあったんです。 確か、両者とも声優は松島みのりさんで、内容もあまり変わらないような気がしました。

昔のアニメの質問です。昔のアニメに「リトル・ルルとちっちゃい... - Yahoo!知恵袋

 

30年ほど昔、テレビ埼玉「陽気なルルちゃん」の枠で、フライシャー、フェーマススタジオ、そしてパラマウント期のパル作品を知りました。パルの人形アニメのみを集めた記録映画をガンビーを作っていたクローキースタジオの流れを汲む〜

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Wikipediaでは『Little Lulu』の邦題のように扱われてますが、『陽気なルルちゃん』というのは海外アニメ3本立ての番組名のようです。

 

放送局

青森県 青森テレビ 1978/09/?? 不明 月~金 6:25~6:55
土・日 6:30~7:00
宮城県 東北放送 1978/10/?? 不明 9:30~10:00
長野県 信越放送 不明 不明 月~金 6:48~
近畿広域圏 読売テレビ 1976/10/04 1976/10/29 月~金 17:15~
兵庫県 サンテレビ 1983/6/07 1983/09/08 月~金 08:30~09:00
福岡県 九州朝日放送 1979/11/03 1980/01/10 月~日 6:30~

読売テレビでは『ルルちゃんとスパンキー』という番組名でした。ちなみに放送開始日は、朝日放送制作の『リトル・ルルとちっちゃい仲間』の1日後です。

 

放送リスト

九州朝日放送

放送日 サブタイトル 備考
1979/11/3 1 おしりをぶたないで  
1979/11/4 2 またやっちゃった  
1979/11/5 3 音楽はどこまでもついてゆく Musica-Lulu?
1979/11/6 4 サーカス見学 Hullaba-Lulu?
1979/11/7 5 アメリカ発見の巻 Bored of Education
1979/11/8 6 ルルちゃん対いたずら猫 Lulu Gets the Birdie?
1979/11/9 7 タネもしかけもあります Magica-Lulu
1979/11/10 8 いたずら作戦  
1979/11/11 9 スーパーマンの巻 Super Lulu
1979/11/12 10 ルルちゃん飼育係の巻 Lulu at the Zoo
1979/11/13 11 ただのりはおことわり Loose in a Caboose
1979/11/14 12 キャンプの巻 A Scout With the Gout
1979/11/15 13 学校をさぼってはいけません A Bout with a Trout
1979/11/16 14 ルルちゃん番犬の巻 Man's Pest Friend
1979/11/17 15 ルルちゃん写真の巻 Snap Happy
1979/11/18 16 お誕生日の巻 Lulu's Birthday Party
1979/11/19 17 ハラペコおばけの巻 Lulu's Indoor Outing
1979/11/20 18 ハゲタカ退治の巻  
1979/11/21 19 花のコンテストの巻 Daffydilly Daddy
1979/11/22 20 ルルちゃん対赤ちゃんの巻 The Baby Sitter
1979/11/23 21 ワンワンコンテスト The Dog Show-Off
1979/11/24 22 ルルちゃんと結婚するとの巻 Beau Ties
1979/11/25 23 大スターになるの巻 Lulu in Hollywood
1979/11/26 24 貯金作戦の巻 It's Nifty to Be Thrifty
1979/11/27 25 キャディーの巻  
1979/11/28 26 なかよしお人形さん  
1979/11/29 27 西部へゆこうぜ  
1979/11/30 28 ギャビー君はきれい好き?  
1979/12/1 29 ぼくたち親友だもんね  
1979/12/2 30 坊やの大作戦  
1979/12/3 31 保安官はカッコいい  
1979/12/4 32 どたばたオーケストラ  
1979/12/5 33 アザラシ坊や北極へ行く  
1979/12/6 34 ペンギンちゃんは知りたがり屋  
1979/12/7 35 どうぶつ音楽会  
1979/12/8 36 氷はコーリゴリの巻  
1979/12/9 37 ギャビーにまかせろ  
1979/12/10 38 (未掲載)  
1979/12/11 39 お休みがやってきた  
1979/12/12 40 どうぶつ村の野球大会  
1979/12/13 41 (未掲載)  
1979/12/14 42 テキサスよいとこ一どはおいで  
1979/12/15 43 おばけのパーティーだぞ  
1979/12/16 44 いたずら小僧と迷子 Alvin's Solo Flight?
1979/12/17 45 がんばれ消防隊  
1979/12/18 46 イヌとネコのたたかい Chick and Double Chick
1979/12/19 47 小人さんの音楽会  
1979/12/20 48 小人たちの金貨  
1979/12/21 49 私オカシなんて大きらい  
1979/12/22 50 スイスのお話  
1979/12/23 51 わがはいはパパである  
1979/12/24 52 おいのりをわすれた王さま  
1979/12/25 53 ジプシーのお姫さま  
1979/12/26 54 ワルツの王さまさんぽがお好き  
1979/12/27 55 (未掲載)  
1979/12/28 56 人くい人種にたべられちゃう  
1979/12/29 57 イカどろぼうはコリゴリ  
1979/12/30 58 キャビー君消火大活躍  
1979/12/31 59 カマユデはいや  
1980/1/1   (放送休止)  
1980/1/2 60 ルルちゃんのお留守番の巻  
1980/1/3 61 ベティちゃんのカーレース  
1980/1/4 62 海底大冒険  
1980/1/5 63 勇者ジムタンティー  
1980/1/6 64 世にもふしぎなぼうし  
1980/1/7 65 ジャスパーちゃんの虫歯  
1980/1/8 66 (未掲載)  
1980/1/9 67 おじさんとふしぎな小人  
1980/1/10 68 歌の騎士 陽気なルルちゃん(終)

 

サンテレビ

赤色は九州朝日放送でのサブタイトルと重複する回です。

放送日 サブタイトル 備考
1983/6/7 1 夏はいいネ! ほか
1983/6/8 2 ケーキの国へ行ってみよう ほか
1983/6/9 3 おいのりをわすれた王さま  
1983/6/10 4 もうひとりのボク  
1983/6/13 5 名なしのワンちゃん  
1983/6/14 6 どうぶつ村の野球大会  
1983/6/15 7 いたずら小僧と迷子  
1983/6/16 8 イヌとネコのたたかい  
1983/6/17 9 サーカスの人気者  
1983/6/20 10 ママとってもキレイ ほか
1983/6/21 11 チューバ君のかなしみ  
1983/6/22 12 ぼくも大人になりたい  
1983/6/23 13 (未掲載) [声]峰あつ子ほか
1983/6/24 14 ルルちゃんおしりをぶたないで  
1983/6/27 15 だだっ子スパンキー ほか
1983/6/28 16 ルルちゃんのサーカス見学  
1983/6/29 17 ルルちゃんアメリカ発見 ほか
1983/6/30 18 クモの巣ホテルの決闘  
1983/7/1 19 小人さんのプレゼント  
1983/7/4 20 あやろし!スパンキー  
1983/7/5 21 カラスのセールスマン  
1983/7/6 22 いかりのオオカミ君  
1983/7/7 23 新婚旅行はお月さまへ  
1983/7/8 24 死なないで小鳥さん  
1983/7/11 25 がんばれ白クマ坊や ほか
1983/7/12 26 とつげきアリンコ部隊  
1983/7/13 27 たまねぎ坊や ほか
1983/7/14 28 ルルちゃん番犬の巻 ほか
1983/7/15 29 よくばり王さま  
1983/7/16      
1983/7/17      
1983/7/18 30 ハワイはすてき ほか
1983/7/19 31 ゆめならさめないで ほか
1983/7/20 32 ジャングルのおきて ほか
1983/7/21 33 よるはネコの天国  
1983/7/22 34 ルルちゃんワンワンコンテスト  
1983/7/25 35 (未掲載)  
1983/7/26 36 お魚の学校  
1983/7/27 37 (未掲載)  
1983/7/28 38 赤ちゃんはどこからくるの ほか
1983/7/29 39 ねむり姫 ほか
1983/8/1 40 坊やの大作戦 ほか
1983/8/2 41 保安官はカッコいい  
1983/8/3 42 どたばたオーケストラ  
1983/8/4 43 ショーはたのしや  
1983/8/5 44 ロバになったどろぼう  
1983/8/8 45 どうぶつ音楽会  
1983/8/9 46 氷はコーリゴリ  
1983/8/10 47 赤頭巾ちゃん  
1983/8/11 48 おねがい!おばけになって ほか
1983/8/12 49 お休みがやってきた  
1983/8/15 50 おいらは船のり ほか
1983/8/16 51 なまけものジャック  
1983/8/17 52 おばけのパーティーだぞ  
1983/8/18 53 がんばれ消防隊  
1983/8/19 54 小人さんの音楽会  
1983/8/22 55 十人の小さなインディアン  
1983/8/23 56 ジャスパーと豆の木  
1983/8/24 57 ジプシーのお姫さま  
1983/8/25 58 おかしな楽器店 ほか
1983/8/26 59 イカどろぼうはコリゴリ  
1983/8/29 60 モクモクモクとでてきたぞ ほか
1983/8/30 61 カマユデはいや  
1983/8/31 62 海底大冒険  
1983/9/1 63 おかしなおかしなライオン君  
1983/9/2 64 ふしぎなクラリネット  
1983/9/5 65 ジャスパーちゃんの虫歯 ほか
1983/9/6 66 下っぱ社員はつらいね  
1983/9/7 67 黄金の国  
1983/9/8 68 お菓子がいっぱい (終)

 

全何回なのか?

出演キャストの峰あつ子は何役なのか?

ルル役は本当に松島みのりなのか?

日本アニメーションの『リトル・ルルとちっちゃい仲間』とはどちらが先に制作されたのか?松島みのりだとすれば、『陽気なルルちゃん』が後でしょうか。初代は増山江威子だったので。)

 

調べてみましたが、分かりませんでした!

いかがでしたか?

 

コメント

実はこれは2020年夏に調査した内容でした。ずっと未発表のままだったので、今回引っ張り出してきた次第です。

思い返せば3年前は時間がたっぷりありました。もっと他のことにリソースを割いていれば良かったのにねえ。

アニメ『To Heart』に2種類のエンディングが存在するのは何故なのか?検証

こんにちは、PSゲーム版『ToHeart』に今更手を出し無事ハマった人間です。理緒ちゃんがお気に入りです。

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声は大谷育江様。かわいい。

PSゲーム版の全ルート完走後、流れで初代アニメ版『To Heart』もDVDで鑑賞したんですが、ネットで情報を漁っていると、この『To Heart』は「エンディングが2種類ある」という珍しいアニメであることを知りました。

Wikipediaの記述を引用してみます。

オープニングテーマ「Feeling Heart」
 作詞 - 須谷尚子 / 作曲・編曲 - 下川直哉 / 歌 - 中司雅美
エンディングテーマ「Access
 作詞 - KAZUYO / 作曲 - 長部正和 / 編曲 - HIRO / 歌 - SPY
エンディングテーマ「Yell」
 作詞 - 六ッ見純代 / 作曲 - 前田克樹 / 編曲 - 坂本昌之 / 歌 - 川澄綾子
新潟放送キッズステーションパッケージメディアでのみ使用。

どうやら、放送局によって、エンディングが『Access』と『Yell』のバージョンの2種類が存在するようです。

Access』は、これがメジャーデビューとなるバンド「SPY」の曲です。それに対して、『Yell』はあかりを演じる声優の川澄綾子の曲となっています。

赤ずきんチャチャ』や『姫ちゃんのリボン』など、テレビで使用した楽曲を映像ソフトで差し替えるという例はたまに聞きます。しかし、放送局によって楽曲が異なるという例はかなり珍しいのではないでしょうか。

Access』版は本放送新潟放送およびキッズステーション除く)のみに使用され、なぜか映像ソフトには収録されませんでした。そのせいで『Access』版は当時の録画映像の他には視聴手段がない"レア"なバージョンとなってしまっています。

 

一体なぜ、通常ではあり得ないこんな状況になったのでしょうか? それもなぜ地上波では新潟だけが『Yell』版になったのでしょうか?

非常に気になります。放送当時に話題に上がることはありましたが、本格的に調査した人はいないようです。

というわけで今回、できる限りの情報を掘ってみました。

 

エンディング映像の比較

まず、『Access』版と『Yell』版のエンディングにはどのような相違点があるか検証してみました。

幸い、ネット上には第1話第5話の『Access』版エンディングがアップロードされています。この2本をDVD収録の『Yell』版と比較してみます。

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第1話

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第5話

映像は『Access』版と『Yell』版で同じものを使用しているようでした。

クレジットの相違点は、「発売」「協力」の有無のみです。『Access』版のみにクレジットされている「ムービック」「バンダイ・ミュージックエンタテイメント」「音楽出版ジュンアンドケイ」の三社は、ともに『Access』の発売に関係する会社です。

映像カットの切り替えのタイミングは、判断が難しいですが私は『Yell』版に合わせているように感じます。特に曲名表示の辺りはサビの「きっと~」に合わせてるはず…。となると、先に『Yell』があって『Access』が後から決まったのでしょうか?

 

Wikipedia情報の検証

冒頭に引用したWikipediaの記述には出典がありませんので、これを鵜呑みにするわけにはいきません。本当に『Yell』版は新潟放送キッズステーションのみで放送されていたのでしょうか、念のため検証しました。

といっても、今から全放送局の録画テープを集めることは不可能に近いですので、ネット上に存在する証言を集めました。

地上波

というわけで検証した表がこちらです。

放送局 エンディング 放送開始日 証言のURL
サンテレビ Access 1999年4月2日 URL
テレビ北海道 Access 1999年4月2日 URL
広島ホームテレビ Access 1999年4月3日 URL
新潟放送 Yell 1999年4月3日 URL
テレビ埼玉 Access 1999年4月4日 URL
千葉テレビ Access 1999年4月4日 URL
テレビ神奈川 Access 1999年4月5日 URL
TVQ九州放送 Access 1999年4月5日 URL
静岡放送 Access 1999年4月6日 URL
KBS京都 Access 1999年4月7日 URL
テレビ愛知 Access 1999年4月12日 URL

広島ホームテレビだけは具体的な証言が見つかりませんでしたので当時視聴していた方に教えていただきました。

Wikipediaの情報は事実でした。ほぼ同日の放送開始にも関わらず、本当に地上波では新潟だけが「Yell」でした。

また、最初は「大幅な遅れネットのために映像ソフト版の素材を使用したのでは?」と考えていたのですが、新潟も同時期の放送ですのでそういうわけでもないようです。

 

キッズステーション

キッズステーションでの放送も同様に検証してみましょう。Wikipediaには以下の記述があります。これも事実なのでしょうか?

キッズステーションではエンディングが川澄綾子の「Yell」だったが、第1話の初回放送1回目のみ、SPYの「Access」が使われた(2回目以降は「Yell」へ差し替えられた)。

 

まずはキッズステーションでの『To Heart』の放送スケジュールを確認してみます。放送当時の個人サイトにリストがありました。キッズでは同じエピソードが3回放送されていたようです。

第1回放映 キッズステーション 毎週火曜 23:00~
第2回放映(再) キッズステーション 毎週木曜 24:00~
第3回放映(再) キッズステーション 毎週日曜 22:00~ https://www7.big.or.jp/~sosan/iinchofc/toheart.html

 

また、掲示板「Mapletown Network」に放送当時のログが残っていました。キッズでのエンディングに言及されています。

4/20 のキッズステーションでもチェックしたのですが、ED が川澄さんが歌う Yell でした。

(中略)

でも、CS 第1話再放送2回とも SPY だったんですけど...
#もしかして、CSは初回放送のみ 川澄さんなのか?

https://www.maple.town/bbs/271/88

キッズステーションでの第2話の2回目と3回目の放送共に、川澄さんバージョンでしたね。

https://www.maple.town/bbs/271/93

 

『月刊ディレクTV』のタイムテーブル(情報提供:TATUさん)を参考に、以上の情報を集約するとこんな感じです。

放送日 開始時 放送回数 ED
4月13日 23:00~ 第1話 1回目
4月14日        
4月15日 25:00~ 第1話 2回目(再) Access
4月16日        
4月17日        
4月18日 22:00~ 第1話 3回目(再) Access
4月19日        
4月20日 23:00~ 第2話 1回目 Yell
4月21日        
4月22日 25:00~ 第2話 2回目(再) Yell
4月23日        
4月24日        
4月25日 22:00~ 第2話 3回目(再) Yell
4月26日        
4月27日 23:00~ 第3話 1回目
4月28日        
4月29日 新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA一挙放送!のため休止)
4月30日        

こちらもWIkipediaの記述は事実のようでした。

第1話1回目のEDが分からないのが残念ですが、これを見るに第1話だけは手違いで『Access』版が放送されたといったところでしょうか。(なぜそんなことが…?)

 

ウワサを検証

これでWikipediaに載っている情報が正しいことが確認できました。それでは、本題の「2種類のエンディングが存在するのは何故なのか?」を検証していきたいと思います。

えー、昔から『To Heart』を知る人ならご存知かもしれませんが、実は手がかりになりそうな「ウワサ」が2ちゃんねるを中心に流布しています。概ね以下のような内容です。

当初はYellが使われる予定だったものの、スポンサーであったバンダイの意向により、グループ内のレコード会社(バンダイミュージックエンタテインメント(旧・アポロンアポロン音楽産業))の所属していたSPYのこの曲に差し替えられたと言われています。ただ地上波において新潟放送でのみ差し替えが行われなかったのは、このゲームのヒロインである、神岸あかりを演じる川澄綾子さんの祖母の出身地が新潟であり、故郷に錦を飾る意味合いの計らいだったとも。

https://ane-memi.blog.ss-blog.jp/2017-05-23

875 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 00:46:41 id:tvOR1D9X0
>>847
あの川澄版のEDには美談ぽい噂があって、
放送前に川澄が先走って祖母にED歌うよと電話しちゃったけど
実際は違う人が歌うことになった。
で、お偉いさんの配慮で、川澄の祖母が住んでいる地域だけ川澄が歌ってるEDになったとかなんとか

https://changi.5ch.net/test/read.cgi/anime4vip/1227880365/875

事実であれば「良い話」ですが、何かちょっと話が出来すぎている気もします。

この話の出どころは何だろう、と調べているとこんな書き込みを見つけました。

694 :風の谷の名無しさん:2001/01/23(火) 13:51
最初のUHF放送では、川澄バージョンEDは東北のどこかの局だけ。
理由はその県が川澄の出身地だから。ウソのようだけど、
これはなにかの本で、音楽プロデューサーが話していた。
キッズの放送は、この後。

https://salad.5ch.net/test/read.cgi/anime/970910541/694

588 :583:03/01/20 13:05 ID:???
>>587
「Yell」は川澄綾子嬢が歌ってるから、綾子嬢の親か親戚の
住んでる地域だけは地上波だけど「Yell」版が放送された、
というのは間違いないはず。そのことがアニメ誌(アニメージュ
に書かれていたのをはっきり覚えてる。ただその地域が
どこかを覚えてない。山形とかテキトーなこと言ってすまぬ。
綾子嬢のプロフィール調べたら東京出身だし…。

http://comic.5ch.net/test/read.cgi/anime/1003724141/488

どうやら、アニメ誌(アニメージュ?)で音楽プロデューサー?が語っていたとのこと。

これで大体の目星が付きました。あとは当時のアニメ誌を片っ端から調べていくだけです。・・・というわけで図書館にこもってひたすら調べてきました。

 

 

結果:見つかりませんでした。

 

ナンデヨッ!!

もしかすると私が見落としているだけかもしれませんし、未確認の雑誌に載っているのかもしれませんが、ともかく見つけることができませんでした。orz

(でもこの調査のおかげで傑作アニメ『アンドロイド・アナ MAICO 2010』を知れたのでヨシとしよう…)

調査した雑誌

 

ちなみに、川澄綾子さん情報を漁っているとこんなツイートがありました。

真偽がわからないのでなんとも言えないですが、少なくとも新潟に川澄さんの親戚がいるのは事実っぽい…?

 

時系列まとめ

「分かりませんでした」で終わるのもアレですし、せっかくいろいろな資料にあたったので、アニメ『To Heart』や「SPY」にまつわる出来事を時系列でまとめてみます。

1998年1月~5月頃 「SPY」結成

日本アイスホッケーリーグSPYインタビューによれば、「98年にグループ結成。」とのことです*1。1998年5月9日の「FML公開オーディションライブ」に出演記録が確認できる*2ので、遅くとも5月には結成と思われます。

 

1998年5月 TVアニメ化決定の発表

漫画版を連載していた「電撃大王」1998年6月号でTVアニメ化が発表されました。

ラジオ、グッズ、コミックと続々メディアコミックスが展開中の「To Heart」がついにアニメ化決定!スタッフは監督:高橋ナオヒト、シリーズ構成&脚本:山口宏、キャラクターデザイン:千羽由利子、アニメーション制作:OLMが担当。なお、詳細情報等は次号以降にて紹介する予定。

なお、次号には何も情報は載っていません。浅賀チーフプロデューサーによれば、当初は1998年10月開始予定だったものの、ゲームを含めた制作スケジュールの関係などから延期になったようです*3

 

1999年1月 TVアニメ放送開始の告知

電撃大王」1998年2月号でTVアニメの放送開始が告知されました。放送開始までエンディングに触れた記事は見当たりません。

To Heart」のアニメーションがいよいよ4月から放送開始!

 

1999年4月 TVアニメ放送開始

TVアニメの放送が開始され、各アニメ雑誌も人気コンテンツの『To Heart』を大きく取り上げています。しかし、エンディングについて触れている雑誌は「Looker」「電撃アニメーションマガジン」「NewType」の3誌のみでした。

「Looker」1999年5月号では、声優情報を扱う「MONTHLY FLASH!」で取り上げられていました。

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声優記事なので当たり前かもしれませんが、ほとんど『Yell』についての内容です。
Access』は「一部地域では別のED曲になるけど」と少し触れたくらいで、曲名すら書かれていません。(…というか、どちらかといえば『Yell』版のほうが「一部地域」なんだよな…)

 

続いて「New Type」1999年5月号です。川澄綾子さんのコメントでエンディングの言及があります。

この作品のエンディングも歌うのですが、元気のよい歌で「Yell」というタイトル。歌詞は「To Heart」にぴったりな、学生さんのための歌(笑)。青春を謳歌している歌ですね

川澄さんは『Access』の存在を知らなかったのでしょうか、全く触れられていません。

 

最後に「電撃アニメーションマガジン」1999年5月号です。

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珍しく『Access』と『Yell』の両方が取り上げられていますが、

To Heart」のエンディングテーマは2パターン存在する。ちなみに、この歌は新潟放送およびキッズステーションでの放送で楽しむことができるのだ。

と書いてあるのみで、その理由については触れられてはいませんでした。

 

1999年5月21日 SPYAccess』シングルCD発売
ACCESS

ACCESS

  • アーティスト:SPY
  • バンダイ・ミュージックエンタテインメント
Amazon

5月21日に『Access』のシングルCDが発売されます。ジャケットには『TVアニメ To Heart エンディングテーマ』と書かれていますが、一部の放送局では使用されていないことは一切触れていません。

ジャケットの「SPY」プロフィールには、「TVKなど全国11局ネットでオンエアー」と書かれています。…ですが、新潟放送では放送されていませんので正しくは「10局ネット」です。バンダイミュージックに『Yell』の存在は伝わっていなかったのでしょうか…?

 

アニメ誌のCD情報でも『Access』の発売予告がいくつか見つかりました。

こちらは「電撃アニメーションマガジン」1999年6月号のバンダイミュージックの広告です。やはりこちらも『Yell』のことは全く触れていません。(関係ないけど思い切りスペルミスしてますね…)

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他のアニメ雑誌も同様にこんな感じで、特に収穫はなく。

バンダイミュージックは5月21日に「天使になるもんっ!」ED「あいは海」(歌・おおたか静流)、「To Heart」ED「Access」(歌・SPY)、「星方天使エンジェルリンクス」サントラなどを発売する。また「エンジェルリンクス」ED「True Moon」(歌・宮原理和子)が現在発売中。

アニメージュ」1999年6月号

美少女たちが織りなす学園ドラマ『To Heart』のED曲。打ち込みのサウンドを基本に、ボリュームのある音色と個性的なヴォーカルが魅力のSPY。彼らのメジャー・デビュー曲だ。C/W「Dreams come true」。

アニメディア」1999年6月号

 

1999年5月21日 アニメ『To Heart』映像ソフト第1巻が発売

Access』シングルCD発売と同日に、アニメ『To Heart』の映像ソフト(VHS・LD・DVD)の第1巻が発売となります。ですが、先述の通りエンディングは『Yell』版のみが収録され、『Access』は収録されませんでした。ジャケットにも『Access』の文字はありません。

 

1999年7月9日 アルバムCD「ToHeart アニメーション・サウンドトラック」発売

オープニングはシングルとして発売されましたが、『Yell』はこのサントラCDが初CD化となりました。

ブックレットには作曲家、監督、音響監督の短いインタビューが掲載されていますが、エンディングの言及はありません。『Access』については、関連商品リストの中にジャケット画像が掲載されているのみです。

当時のアクアプラス公式HPでは、こんな商品紹介が掲載。

OPソング&(新潟放送以外の)EDソングは収録されません。 

https://web.archive.org/web/20001018101023/http://www.aquaplus.co.jp/th_anime.html

こちらもアニメ誌で発売予告が掲載されています。理由についてはやはり触れられておらず。

サウンドトラックアルバムも発売!キッズステーション、ビデオ、新潟放送でのみ流れたED。川澄綾子が歌う「Yell」がやっと収録されることになったのだ。発売はフィックスレコード、販売はキングレコードで価格は2548円(税込)

アニメージュ」1999年8月号

あかり役の川澄綾子の唄うED主題歌「Yell」も収録されているぞ。

電撃大王」1999年8月号

 

1999年11月21日 SPY『GO AND CRUSH』シングルCD発売
GO AND CRUSH

GO AND CRUSH

  • アーティスト:SPY
  • バンダイ・ミュージックエンタテインメント
Amazon

日本アイスホッケーリーグとのタイアップソングらしいです。余談ですがこれの中古を入手したらサイン付きでした。

 

1999年12月17日 アニメ『To Heart』映像ソフト第7巻(最終巻)が発売

全巻発売までに半年ほど掛かっていますが、浅賀チーフプロデューサーによれば、作中時期とあわせるためにわざと遅らせたようです*4

 

2000年4月 「SPY」メンバー1名脱退

2000年4月、HIROが脱退し、4月より女性2人の個性をより際立た せた新しいSPYとして活動開始。

https://web.archive.org/web/20001020093515/http://www.jkmusic.co.jp/spy/p2_profile.htm

 

2000年5月 バンダイミュージック解散

SPYのレコード会社であるバンダイミュージックが解散。

なお、たまに『Access』が映像ソフトに収録されなかったのはこのことが関係しているという話を見かけますが、ご覧の通り、映像ソフトの発売は解散以前のことですので関係はありません。そもそもバンダイミュージック解散のせいで収録されないなら『おジャ魔女カーニバル!!』も封印されてるはずだし…

 

2001年2月21日 CDアルバム『Access with Brand New SPY』発売

SPY唯一のアルバムで、『Access』およびそのアレンジも収録されています。解散したバンダイミュージックに代わってアニメイト系のマリン・エンタテインメントから発売されました。結果的にはこれが最後のCDということに。

 

2001年3月11日 CDアルバム発売記念イベント開催

CDアルバム『Access with Brand New SPY』の発売記念で、アニメイト池袋本店でイベントが開催されました。

次は、池袋のアニメイト池袋本店でのイベントについて。
・今回のイベントは、「トーク&ミニライブ」ということで、どちらかというとトーク中心のイベントでした。司会の方(名前は失念)と3人で、SPYの生い立ちから現在までの事や、レコーディングの事などなど内容は盛りだくさんでしたが、司会の方の強烈なコメントが炸裂して、妙な盛り上がりでした。
・お客さんの層が、いわゆる「濃い」方が多かったので、いままでのライブとは別の盛り上がり方でした。

https://web.archive.org/web/20021006162602/http://www.interq.or.jp/www-user/toby55/spy/live-event.html

SPYライブイベント決定のお知らせ
  *一部訂正があります。
ファーストアルバム「Access with Brandnew SPY」発売記念
  開催日:2001年3月11日(日)
  開始時間:14:00より
  会場:アニメイト池袋本店8Fイベントフロア
  内容:歌  トーク
  参加方法:2/21発売「Access with Brandnew SPY」を
  下記アニメイト店にてご予約・またはご購入して頂いた方
  で、イベント参加希望の方に先着で100名様に整理券を
  お渡し致します。

https://web.archive.org/web/20010224014154/http://www.jkmusic.co.jp/spy/new_i.htm

イベント整理券配布は池袋本店だけでなく他の店舗でも行われたようですが、気になる記述が。

  整理券配布店舗:
      池袋店/渋谷店/秋葉原店/吉祥寺店/町田店/
            新橋店/
  
  尚、先日の告知に「新潟店」とありましたが、
  新潟での配布はありません。
  お詫びして訂正致します。申し訳ございません。

https://web.archive.org/web/20010224014154/http://www.jkmusic.co.jp/spy/new_i.htm

なぜか新潟店が後に取り消されています。『To Heart』で新潟といえば……!? もしや、新潟では『Access』が放送されていないから取り消されたのでしょうか。考えすぎ?

 

2001年12月 「SPY」解散

SPYは昨年12月をもって解散致しました。
今までたくさんの応援ありがとうございました。

https://web.archive.org/web/20020617131218/http://www.jkmusic.co.jp/spy/

これ以後は2007年の『To Heart』DVD-BOX発売くらいで、特に初代アニメ版に関する動きは見当たりません。

 

ちなみに ― 数年前の一時期「SPY」が復活していた

メジャー当時のメンバーではないようですが、SPYは2013年~2015年の一時期に復活していたようです。動画はその頃に撮影された映像です。

復活に伴って開設されたHIRO氏のブログでは、『Access』のタイアップに触れられていました。

その昔、アニメの主題歌というと、Z---っと!!でおなじみ水木一郎アニキのような、いわゆるアニソン歌手の方が歌うものが多かったんではないでしょうか。

その後、ドラマのタイアップソングのような形で有名ミュージシャンを起用することが増えていきました。
不肖、われわれSPYAccessも(有名ミュージシャンではありませんでしたがw)そんな感じで、作品とそこまで密接な関係をもったものでもありませんでした。

http://spy2013hiro.blogspot.com/2013/02/blog-post.html

そして、ライブでトリを飾ったのがご存知SPYさんのデビュー曲Accessということになります。テレビ東京系?だったか深夜アニメ「To Heart」のエンディング・テーマとして採用されました。つまり我々れっきとしたアニソンバンドなのです。
と、いっても別に制作現場におじゃましたりとか、声優さんと交流を持ったりとかそういったことはまったくありませんでしたが。

http://spy2013hiro.blogspot.com/2013/03/blog-post_14.html

ある程度予想していましたが、やはり単なるタイアップだったようです。

Access』を「マルチの心情を歌っている」「琴音の心情を歌っている」などと予想している方がいましたが、実際には偶然の一致といったところでしょうか。

まぁ偶然でもそれはそれで面白いですし、アニソンとしての魅力は全くおとろえませんが!

 

ちなみに ― 次回予告にもTV放送版があるらしい

情報を漁っている最中でこんな書き込みを見つけました。

488 :ななしん:02/03/19 23:17 id:YROJXIo.

俺もAccess派 全話録画したのを持っている。

次回予告も放送版と販売版(DVD等)ではセリフ違うから 俺にとってはお宝だ。
(後略)

494 :ななしん:02/03/19 23:45 id:XAXK4JMs
>>491
ああ、違うから見直してみ。
全くの別物になっているのもあるから。
理緒の次回予告は放送版のみだから貴重。
(後略)

http://comic.5ch.net/test/read.cgi/anime/1003724141/488-494

なんとエンディングだけでなく、次回予告にも映像ソフト未収録のTV放送版があるようです。

どういうこと?と思っていたらアニメージュの「PERFECT DATA ON STAFF」に詳しい記録が残っていました。

本作品はサンテレビをはじめとするほとんどの局で、EDに「Access」を使用したバージョンを放映しているが、新潟放送の全話およびキッズステーションの2話以降は「Yell」を使用したバージョンを放映している(画面は同一)。4,5話はプレイステーション版ゲームのプレゼント告知が後に入ったため、次回予告が短縮版。

(1999年8月号)

10~13話はプレイステーション版ゲームのプレゼント告知が後に入ったため、次回予告が短縮版。

(1999年9月号)

なるほど、プレゼント告知のために放送では限定の短縮版が使われていたというわけですね。どうせなら映像特典で収録してくれればよかったのに…

なお、プレゼント告知は動画アップロードしている方がいるため視聴が可能です。残念ながら次回予告はカット。

Access』版のエンディングが放送されているはずのテレビ神奈川ですが、告知のバックでは『Yell』が流れていることにビックリです。当時の視聴者にとっては謎の楽曲だったのでは?

 

・・・・・

 

いかがでしたか?

結局真相に辿り着けていないどこぞのスパムブログみたいな釣り記事になってしまいました。ネット上の噂を確定できる資料を見つけることはできませんでしたが、その他の出来事や証言を見る限り、それなりに真実味はあるのかなぁという感じはします。

何かエンディングに関する情報をご存じの方がおられましたらコメントください。お待ちしております。あと私の好きな理緒ちゃん回の放送版次回予告持ってる方見せてください(追記:見られました。ありがとうございました)

以上。

*1:https://web.archive.org/web/20001102045222fw_/http://nhl.millicent.gr.jp/slap_12.htm

*2:

http://www.unknown24.net/ev/ev199805.html

*3:KSS PERFECT COLLECTION SERIES TV ANIMATION To Heart VOL.1

*4:KSS PERFECT COLLECTION SERIES TV ANIMATION To Heart VOL.1

幻のドキュメンタリーアニメ『すばらしい世界旅行・未来シリーズ』を追究する【前編】

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日本テレビでは、1966年から1990年にかけて『すばらしい世界旅行』というドキュメンタリー番組が放送されていた。

約24年間の長きに渡って親しまれた番組で、40代以上で知らない方はいないと言っても過言ではないだろう。一社提供の日立の「この木なんの木」で記憶している方も多いかもしれない。

 

今回取り上げるテーマは、ずばり『すばらしい世界旅行』だ。といっても、その対象は実写ドキュメンタリーではない。

あまり知られていないが、番組初期のすばらしい世界旅行』は、「すばらしい未来」*1シリーズと銘打ったアニメーションを放送していたのである。

 

ドキュメンタリーという地味(?)な題材のためか、これまで未来シリーズはアニメ研究の文脈でほとんど取り上げられてこなかった。当然インターネットでも情報は皆無に近く、謎に包まれた存在であった。

現実を描くドキュメンタリーと虚構を描くアニメーションは、一見無縁のように思える。いかにして、アニメーションがドキュメンタリー番組の『すばらしい世界旅行』で使用されるに至ったのだろうか?

 

調査を進めると、未来シリーズには横山隆一真鍋博月岡貞夫林静一、木下蓮三といった著名なアニメーション作家が数多く参加していることが分かった。アニメーションの制作主体には虫プロダクションや黎明期のナックが関わっており、あの『チャージマン研!』にも(若干)影響を与えているようだ。

この連載では、未来シリーズの足跡を追っていきたい。

 

TVアニメ25年史

前述の通り、未来シリーズを取り上げたアニメ研究資料はほとんど皆無である。

その唯一と言っていい例外が、発行当時までのTVアニメをほぼ網羅していることで知られる「TVアニメ25年史」(1988年)だ。

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【「TVアニメ25年史」16ページ、21ページ】

ここでは、『アラスカの旅・第五氷河期』と『ニューヨークの旅・コンピュートピア』の2本が掲載されている。当時のスタッフの証言を総合して作成された貴重な資料だ。

だが、実は、未来シリーズはこれが全てではない。なんと、このほかに少なくとも2本が存在することが調査で判明したのだ(詳細は後述)。

※余談だが、『星の子ポロン』の解説にも未来シリーズへの言及が存在する。これが私が未来シリーズに興味を持ったそもそものきっかけなのだが、話がややこしくなるのでこの記事ではあえて触れないでおく。

 

未来シリーズの全貌

未来シリーズの全貌を明かしたい。

だが、ドキュメンタリー番組は、アニメやドラマ等と異なりマニアによって放送リストが公開されることが少ない。したがって『すばらしい世界旅行』の放送内容はほとんど知られていない。

…となると、もう取れる手段は、当時の新聞ラテ欄の調査しかない。

仕方がないので、番組開始の1966年から1969年までの放送リストを作成・整理することにした。自宅で新聞DBが使える環境が有り難い。

 

未来シリーズ一覧(暫定)
地域 サブタイトル 放送日
12 ハワイの旅 イルカと話せる 1966年12月25日
17 アラスカの旅 第五氷河期(前編) 1967年1月29日
18 第五氷河期(後編) 1967年2月5日
27 アラブの旅 食糧戦争 1967年4月9日
66 ニューヨークの旅 コンピュートピア・西暦2000年の物語(前編) 1968年1月7日
67 コンピュートピア・西暦2000年の物語(後編) 1968年1月14日

というわけで、以上が放送リストから未来シリーズと思われる回を抜き出したリストである。読売新聞東京版、毎日新聞東京版、朝日新聞名古屋版、および他資料をもとに作成した。

 

当時の資料を探る

当然ながら、ドキュメンタリー番組のメインターゲットは大人である。それは未来シリーズも同様で、当時としては珍しい大人をターゲットとしたTVアニメであった。

そのため、物珍しさも合ってか当時の新聞や雑誌に取り上げられる機会は比較的多かったようだ。特に東京新聞ではかなりの頻度で取り上げられていた。

長々と説明するよりも、記事を見ていただいた方が理解が早いだろう。ここからは記事を時系列順に取り上げていく(クリックで画像拡大)。

 

ハワイの旅:イルカと話せる(1966年12月25日放送)

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【「毎日新聞」1966年12月13日】

 

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【「読売新聞」1966年12月21日】

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【「毎日新聞」1966年12月25日】

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【「朝日新聞」1966年12月25日】

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【「東京新聞」1966年12月25日】

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【「週刊TVガイド」1967年1月6日号、P157】

 

これが未来シリーズの第1作である。

当時盛んに行われていた「人間とイルカの会話の研究」を紹介する内容だったとのことで、番組の冒頭には、ハワイ・オアフ島の海洋研究所の取材映像(実写)が挿入されたようだ。

なんと言っても、本作の特筆点は横山隆一がキャラクターデザインで参加している点だろう。おとぎプロのミニ番組を除けば、横山が直接携わったTVアニメは数少ない。『フクちゃん』原作者としての知名度が高いこともあってか、このことは当時の番宣記事でも大きく取り上げられ、毎日新聞や週刊TVガイドには横山による設定画まで掲載されていた。

制作時には『動物と話せる時代』*2『人間とイルカ』*3という仮題が使われていたらしく、当時の番宣記事やスタッフの経歴紹介などでその名称が確認できる。

また、現在公開はされていないものの、脚本データベースに本作の脚本が登録されている。第2稿と第3稿は『人間とイルカ』、第4稿は『イルカと話せる』のタイトルとなっているようだ。

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DATA
プロデューサー:森正博
脚本:横田弘行、森正博
キャラクターデザイン(原画):横山隆一
アニメーション(動画):月岡貞夫
声の出演:ナレーター(久米明

※『毎日新聞』1966年12月13日、『読売新聞』1966年12月21日、『朝日新聞』1966年12月25日、『東京新聞』1966年12月25日、『週刊TVガイド』1967年1月6日号を元に総合的に作成

 

アラスカの旅:第五氷河期(1967年1月29日/2月5日放送)

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【「朝日新聞」1967年1月29日】

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【「朝日新聞 名古屋版」1967年1月29日】

 

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【「毎日新聞」1967年1月29日】

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【「東京新聞」1967年1月29日】

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【「週刊TVガイド」1967年2月3日号、P102】

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【「読売新聞」1967年2月3日】

本作は「未来シリーズ」初の前後編として放送された回である。

脚本データベースには、本作の脚本の第三稿が登録されており、国立国会図書館で閲覧可能である。なお、脚本データベースには「グリーンランドの旅雪と氷の世界(第一部)」という未知のタイトルも登録されている。私が閲覧した限りでは、恐らくこれは本作の初期稿のような気がする(根拠はない)。

DATA
チーフプロデューサー:牛山純一
プロデューサー:森正博、野口英夫、河村治彦、渡辺忠美、黒川慶二郎
ディレクター:森正博
脚本:佐々木守、森正博
原画:真鍋博
動画演出:木下蓮三
第二原画:岡本良雄
動画:田村有美子
トレス:黒川八枝子
彩色:落合幸世
美術:藤本四郎
撮影:佐倉紀行、野宮進
動画撮影:虫プロダクション
編集:伊藤二良
音楽(音楽効果):岩味潔
製作:日本テレビ
声の出演:ナレーター(久米明

※『読売新聞』1966年12月21日、『朝日新聞』1967年1月29日、『週刊TVガイド』1967年2月3日号、『日本映画監督全集』、『TVアニメ25年史』、後述の資料を元に総合的に作成
 アラブの旅:食糧戦争(1967年4月9日放送)

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【「東京新聞」1967年4月9日】

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【「毎日新聞」1967年4月9日】

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【「朝日新聞」1967年4月9日】

未来シリーズのうち、この回だけは新聞での扱いが何故か小さく、情報の少ない回だ。見つかったスチル写真も東京新聞に掲載された1枚だけだった。

DATA
ディレクター:森正博
脚本:佐々木守、野口秀夫
演出・原画:木下蓮三

※『朝日新聞』1967年4月9日、『東京新聞』1967年4月9日、『日本映画監督全集』を元に総合的に作成
 ニューヨークの旅:コンピュートピア・西暦2000年の物語(1968年1月7日/14日放送)

 

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【「東京新聞」1968年1月7日】

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【「朝日新聞」1968年1月7日】

これが恐らく未来シリーズの最終作だ。

前作の「アラブの旅」から8ヶ月の期間を空けて放送された。脚本は、これまでと異なり、アニメ畑の辻真先が担当している。

DATA
プロデューサー:牛山純一
ディレクター(演出):河村治彦
脚本:辻真先、河村治彦
デザイン:篠田昌三
アニメーション:月岡貞夫
作画協力:杉井ギサブロー
背景:松本強
動画撮影:工房ナック、小柳朔郎
編集:伊藤二良
協力:増田米二
製作:日本テレビ
声の出演:語り手(久米明)ほか

※『東京新聞』1968年1月7日、『TVアニメ25年史』、辻真先『TVアニメ青春記』を元に総合的に作成

 

以上である。未来シリーズがどういった作品か把握していただけただろうか。

 

映像の行方

意外に思われるかもしれないが、これまで『すばらしい世界旅行』は一度もビデオソフト化されたことがない。

当然、未来シリーズも同様である。

 

そもそも未来シリーズが放送されたのは1960年代の話。録画機器はまだ一般家庭には普及していない時代だから、録画映像も現存していないだろう。こうなると、もう映像の視聴は不可能なのだろうか・・・。

だが、実は映像は意外な所から見つかっている。そもそも、本編映像ありきでこの連載がはじまっていたのだ。

 

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そう、驚くべきことに、未来シリーズの映像を公開している施設が存在したのである。

茨城県にある龍ケ崎市立中央図書館だ。

なんでも、龍ケ崎市が『すばらしい世界旅行』プロデューサー・牛山純一にゆかりのある地であることから、牛山の死後、龍ケ崎市立中央図書館内に「牛山純一ライブラリー」が開設されたらしい。

ここでは牛山の代表作600本の映像が公開されており、その600本のなかに未来シリーズの「第五氷河期」(前・後編)の2本の映像が含まれていたというわけだ。

早速(2020年2月)、行ってきて視聴した。時期は新型コロナ拡大直前、ギリギリのタイミングだった。

内容

1998年10月設立の牛山ライブラリーは、DVDではなくVHSで映像資料が所蔵されている。今回視聴した「第五氷河期」はS-VHSに記録されていた。

(余談だが、図書館のテレビの仕様でアス比16:9に引き伸ばした形の再生となってしまったのが少し不満だった。)

以下に簡単に内容をまとめよう。

番組オープニング

まず最初に番組のオープニング映像(アニメ)が流れ、「すばらしい未来」と大きくタイトルが表示される。

文献によって「未来シリーズ」「未来編」など表記ゆれが存在するが、正式なシリーズ名は「すばらしい未来」と考えて良さそうだ。そのあと、「制作 日本テレビ」「日立」のテロップが表示された。

実写映像→サブタイトル→アニメーション

前後編とも、番組の冒頭は取材による実写映像だった。

実写映像の後、サブタイトルが表示される。前編はフィルム焼き込みテロップだが、後編は後年に新造されたと思われる電子テロップだった。「第五」と「第5」で表記ゆれがあるが、前者が正しいと考えて良いと思う。

アラスカの旅
第五氷河期
ー前編ー

アラスカの旅
第5氷河期ー後編ー

サブタイトル表示のあと、いよいよアニメーション映像が開始される。VHSデッキの時間を確認してみると、前編では4分30秒から、後編では5分10秒からの開始だった*4。『すばらしい世界旅行』は30分番組だから、実写主体ではなくアニメ主体の作品と考えて間違いないだろう。

番組エンディング

テープの最後には電子テロップによるスタッフクレジットが収録されていた。クレジットは前後編ともに同じ内容だ。恐らくTVアニメ25年史を元に新規作成したものだろうか。ちなみに製作の日本テレビロゴだけはフィルム焼き込みだった。

ディレクター  森正博
ナレーター   久米明

アニメーター  木下蓮三
原画      真鍋博
脚本      佐々木守

撮影      野呂進
        虫プロ
編集      伊藤二良
音響      岩味潔

プロデューサー 牛山純一
製作      日本テレビ

感想メモ

  • 作画クオリティはあまり高くはない。
  • キャラクターデザインはアメコミっぽい(?)リアル調。
  • 線が太い。
  • とにかく洒落てる!
  • 基本的に久米明のナレーションのみで構成される。
  • キャラクターの台詞も久米明の一人芝居?
  • ジャズパートのリミテッド的演出がすごく良い。
  • 当時の他のTVアニメと比べてアーティスティックな印象。
  • 止め絵をトラックアップやパン、回転で魅せるリミテッド的演出が多い。
  • 後編には、ある少女キャラがメインで登場。声はどこかで聞いたことのある女性声優(名前は分からない…)。
  • ストーリーはパニック映画風。
  • 人類の環境破壊によって北極の氷が溶けて大規模な洪水が発生する。だが人類は何も対策をせず…、といったストーリー。

感想が薄くて申し訳ないが(1年以上前の話なので記憶が忘却しかけてる)、当時の一般的なTVアニメとは全く異なる作風で非常に見応えのある作品だった。

 

愛媛の旅

さらに調査を進めていると、愛媛県立美術館の「真鍋博コレクション」に『第五氷河期』の宣伝はがきが所蔵されていることが判明した。真鍋は『第五氷河期』に原画(キャラクターデザイン)として参加している人物である。先ほどの牛山と同様、真鍋が愛媛県にゆかりのある地であることから「真鍋博コレクション」が開設されたらしい。

遠隔複写は受け付けていないとのことだったので、早速(2020年10月)、現地まで行ってきた。

で、複写したのが、記事のトップにも表示したこれである。イラストは「朝日新聞」1967年1月29日の記事に掲載されたものと同一だ。

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裏面には、詳細なスタッフ名がずらりと掲載されていた。本放送のテロップでもここまで詳しくクレジットされてないかもしれない。情報の少ない作品だから、このデータは研究に大いに役立った。

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まとめ

前編では作品紹介を中心に取り上げてきたが、如何だっただろうか? 多くの人が初めて知る情報ばかりだったのではないだろうか。

後編では趣向を変えて、「未来シリーズ」という異色のドキュメンタリーアニメが成立した経緯や、終了の経緯、その後の動向等々について、詳しく取り上げていきたい。乞うご期待。

 

【後編につづく】

*1:文献によって「すばらしい未来」「未来シリーズ」「未来編」など、表記ゆれが存在する。この記事では「未来シリーズ」と表記する。

*2:週刊TVガイド

*3:毎日新聞1966年12月13日や月岡貞夫「新技法シリーズ アニメーション」

*4:冒頭ビデオ注意テロップを含んだ時間

アニメ「サザエさん」のドラマ盤レコードの話

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前回に引き続き、今回もアニメ「サザエさん」に関する記事である。今回取り上げるのは、タイトルにもある通り「ドラマ盤レコード」だ。

メディア展開の少なかったサザエさんだが、まだ権利関係が緩かった1970年代には、ドラマ盤が複数発売されていた。ネットでは情報が殆ど無いので、詳しく取り上げていこう。

 

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「火曜日版サザエさん」の知られざる放送形態について

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 かつて、ゴールデンタイムに『まんが名作劇場 サザエさん』(通称「火曜日版サザエさん」)という番組が放送されていました。

 簡単に言えば「火曜日版サザエさん」は日曜日版サザエさんの再放送なのですが、22年も続いた長寿番組にも関わらず、その詳しい放送形態は不確かで曖昧な情報しか知られていません。

 というわけで、過去のテレビ番組表を元にして、火曜日版サザエさんの放送形態を詳しく調べてみましたよ、という記事です。

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黎明期のアニメ通信教育!民話社の講習パンフレットを紹介しよう

 一部の方々には知名度の高いアニメーション制作会社『民話社』。

 この会社はアニメ制作だけでなく、アニメーションの通信教育事業も手掛けていました。詳しくは私が初版作成したWikipedia記事を閲覧していただければと思いますが、1968年頃に事業開始というのは中々に先見の明があると言えそうです。

 民話社の社長である大矢敏行氏は、もともとアニメではなく実写畑の人物でした。実写映画では主に撮影を手掛けていたそうですが、カラー研究の為に実写の人材を集めて制作した『ドルフィン王子』(制作:テレビ動画)をきっかけにアニメの世界へ進出したようです。そして、この民話社はそれから約3年後の1968年に設立(正確には改称)されました。残念ながら民話社は1973年で倒産してしまいますが、その後も大矢氏は代々木アニメーション学院を設立し、再びアニメーション教育に携わることになります。が、それはまた別の話…。

 

という訳で今回、そんな民話社が発行していた講習パンフレット(多分資料請求すると送られてくるやつだと思います。)を4枚入手できましたので、ご紹介します。

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海外では人気!?伝説のアニメ「ゴーゴー五つ子ら・ん・ど」の魅力を語る

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あなたはゴーゴー五つ子ら・ん・どという作品をご存知だろうか?

 

……たぶん、知らない方のほうが多いかもしれない。


それもそのはず、この作品、関東・東海地方の早朝でのみしか放送されていない、「そこそこマイナー作品」なのだ!しかも、本放送以来、ソフト化も再放送も一切なされていないという不遇な境遇にある。そのため、放送地域以外でご存じの方はほぼゼロだろう。

 

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