陽の目を見なかった!1960年代の幻のアニメ化企画を探る
これまで日本では実に3000本以上のTVアニメが放送されてきました。
しかし、その裏側にはその何倍もの「陽の目を見なかった幻のアニメーション企画」が存在します。中には雑誌で発表しておきながら、直前になって中止されたものまで…。
この記事では、特に1960年代~1970年代前半の企画に焦点を絞って、雑誌「COM」で発表されたTVアニメの幻企画を紹介します。
もしこの時代にこの作品が出ていたら、TVアニメの歴史はどうなっていたか……、想像してみるのも楽しいかもしれません。
1967年1月号
フータくん
まずは「TVアニメ25年史」でも特別に取り上げられていた幻企画の代表格からご紹介。これに関してはkoikesanさんによるブログ記事が詳しい。
劇場用長編まんが
- 制作:TCJ
- 時代劇もの?SFもの?
おかしなあの子
追記:発表から4年後に「さるとびエッちゃん」と改題の上でアニメ化が実現していました。(コメント欄でのご指摘感謝です)
ボンボン
黒い風
1967年2月号
日本の民話のアニメ化
- 制作:フジテレビ系の某社*1
- 内容:古い民話を、現代の子どもたちにも理解されるような新しい感覚と斬新なテーマで表現する。
日本の民話といえば、後の1970年代に「民話社」によって16mm教材として制作されている。民話社とフジエンは共同制作を手掛けるなど、繋がりが強いことで知られるが、この企画との関係性は不明。
1967年3月号
スーパー・ベビー(仮題)
- 制作:テレビ動画
- 内容:SFホームドラマ。理屈抜きのギャグもの。
1967年4月号
カミナリ五郎兵衛
「ハリスの旋風」の後番組として企画が進められていたが、同番組の好評による延長で立ち消えになったとみられる。コミカライズは4月から「まんが王」にて連載が始まっていたらしい。実際の後番組は同社制作「ドンキッコ」となった。
【追記】コメント欄でのご指摘により、この作品と1968年2月号で紹介された「雷ゴロちゃん」は、「カミナリゴロッペ」と改題された上で図書館等へ16ミリフィルムとして販売されていたことがわかった。「カミナリゴロッペ」は、ピープロ公式サイトでも1966年制作と紹介されているので間違いないだろう。
リルアブナー
1967年6月号
ケネディ騎士団
- 制作:TCJ
- 放送開始予定:1967年10月
- 放送局:TBS
- 30分、カラー
この作品のパイロット版は、2016年に発売されたDVD「ワイルド7」の特典映像としてソフト化されている。また、TCJの元プランナー・鷺巣政安さんの著書「アニメ・プロデューサー鷺巣政安」に詳しい記述がある。
1967年8月号
トラコン三Q士
- 制作:東京ムービー
- 放送開始予定:1967年10月
- 状況:企画中
海の王子タンタン
- 原作:泉ゆきを(少年ブック連載)
- 制作:TCJ
- 状況:制作進行中
1967年9月号
フライング・ベン
この企画について、後に手塚自身が単行本のあとがきで語っている。ここで紹介したのは1度目のパイロット版と思われる。
1967年10月号
カムイ伝
- 制作:TCJ
- 状況:作品内容が残酷であるという理由から制作延期
上述の鷺巣政安さんの著書で詳しく言及されている。
1967年11月号
ファイティング番長
1967年12月号
東京アニマル探偵局
ワイルド・ヒック
1968年2月号
雷ゴロちゃん
- 制作:ピープロ
- 放送開始予定:1968年4月(夕方6時台)
- 放送局:フジテレビ
- 篠田ひでをによりまんが王でコミカライズ(原作?)連載。
上述の「カミナリ五郎兵衛」の項を参照のこと。
1968年3月号
ガムガム・パンチ
戦国さら丸伝
- 制作:虫プロダクション
1968年5月号
デカメロン/ファウスト(アニメラマ第2作)
0マン
1968年6月号
ゴジラ(東京ムービー版)
1968年7月号
ハニーハニーのすてきな冒険(東映動画版)
- 原作:水野英子(りぼん連載)
- 制作:東映動画
- 状況:企画[1968年7月号]→予定[1968年8月号]
- 放送開始予定:1968年10月[1968年7月号]
- 「魔法使いサリー」の後番組を予定[1968年8月号]
残念ながらこの時には企画が流れてしまったが、1981年に国際映画社の元請けでアニメ化された際、東映動画は実制作を手がけている。東映動画は13年経ってもまだこのアニメ化を諦めていなかったのかもしれない…?
もーれつア太郎(スタジオゼロ版)
- 制作:スタジオゼロ
- 放送開始予定:1968年10月
- 状況:企画
天才バカボン(日放映版)
- 制作:日放映
- 放送開始予定:1968年10月
- 状況:企画
1968年8月号
ノーマン
1968年10月号
21エモン(スタジオゼロ版)
- 制作:スタジオゼロ
- 放送開始予定:1969年春
- 状況:制作にとりかかり中
1968年11月号
ルパン三世(TCJ版)
めくらのお市物語
1968年12月号
天才バカボン(スタジオゼロ版)
もーれつア太郎(スタジオゼロ版)
牙王
少年王者
- 原作:山川惣治
- 制作:オフィス・ユニ
アルプスの少女ーハイジー(TCJ版)
- 制作:TCJ
- 状況:企画
後に瑞鷹でアニメ化。「エイケンTVアニメ主題歌大全集」の特典映像としてパイロット版がソフト化されている。
ラビットちゃん
- 制作:フジエンタープライズ
- 状況:企画中
- 5分帯アニメ
1969年1月号
天才バカボン(日本動画版)
1969年2月号
怪奇ハンター
- 制作:東映動画
- 状況:今夏には上演可能か?
わんぱく太閤記
- 制作:第一動画
- 国民の間にある秀吉”伝説”を集大成、アニメ化しようとしている
- アニメ界の不況とあいまって、前途多難が予想される。
仙人部落(第2期)
- 原作:小島功
- 状況:放映を再開しようという動きがある
1969年4月号
スマイル・ジャンプ
- 放送開始予定:1969年4月
- 朝の青年番組「ヤング720」内で放送
- アニメと実写混成のまんが
この番組については詳細不明ですが一応掲載。もしかすると放送に漕ぎ着けていたかもしれません(確認する術がありません…)。
1969年8月号
タンクタンクロー
- 原作:坂本牙城
- 制作:スタジオ・ゼロ、東京ムービー(共同制作)
- 脚色・キャラデザ:藤子不二雄
- 状況:パイロットフィルム完成
- 放送開始予定:1969年10月
- スタッフ「現代的センスでアニメ化し、今の視聴者に楽しんでもらえるものにしたい。」
透明人間
- オリジナル作品
- 制作:Pプロ
- 放送開始予定:1969年10月
- 放送局:フジテレビ
- 内容:透明人間になることができる主人公の少年が、つぎつぎに事件を解決していくお話。
1969年9月号
キッカイくん
実現すれば永井作品初のアニメ化となる予定だった。
TCJ 忍者カムイ外伝の次企画
実際にはサザエさんがアニメ化されるわけですが、ここで挙がっている作品がアニメ化されていたら歴史は確実に変わっていたでしょうね。
1969年11月号
30分もののクイズ番組
- 制作:スタジオK(木の実光主宰)
- クイズブームを児童の番組に持ち込もうとするもの(?)
- 部分的にアニメを使用、スリルとサスペンスをもりこんだ斬新なものになるかも
この番組については詳細不明ですが一応掲載。もしかすると放送に漕ぎ着けていたかもしれません(確認する術がありません…)。
1970年2月号
くたばれ涙くん
- 少年サンデー連載
- 状況:具体化している
- 掲載文→「赤き血のイレブンは、「くたばれ涙くん」のテレビ化が具体化しているときだけに、その成りゆきが注目されている。」
1970年4月号
鉄腕アトム
- 制作:虫プロダクション
- 放送開始予定:近いうち
- スタッフ「前作に負けないくらい良い作品にしてみせる」
1970年7月号
のらくろ
1971年8月号
鉄腕アトム
- 制作:虫プロダクション
- 状況:再企画が出る
1971年10月号
リュウの道
- 原作:石森章太郎
- 放送開始予定:1971年11月
- 状況:放映されることになっている
追記:「原始少年リュウ」としてアニメ化が実現していました。(コメント欄でのご指摘感謝です)
1971年11月号
少年王者
同時期に民話社により同名の16ミリ作品が制作されているが、関連は不明。
1971年12月号
鉄腕アトム
- 状況:声がかかっている
- 放送開始予定:近々
性蝕記
詳細は次回号で掲載するとのことだったが、残念ながら今号で廃刊のため詳細不明。東京テレビ動画は、「千夜一夜物語」「ヤスジのポルノラマ」で大失敗した後も、まだアダルトなアニメーションを志していたようです。
まとめ
以上となります。
この中にはパイロットフィルムが完成、もしくは制作中の作品も多いですが、いったいフィルムはどのくらいの数現存しているのでしょうね…?現存しているなら見てみたいものです。
最後に、今回調査に至るきっかけとなったmashioさん、10年前に一部号のスキャンをアップしてくださっていたギャラットさん(一部画像も拝借させていただきました)、ありがとうございました。
(2021/03/12更新:調査の抜けを補完)
*1:フジテレビ・エンタプライズ?