幻の時報番組を上映!第3回時報映画作品研究会を開催しました【研究レポ】

どうもDoughです。

1月7日、かねてよりTwitterで告知しておりました「第3回時報映画作品研究会」という上映イベントを開催しました。第1回や第2回とは違い、今回はアニメ作品ではなく、実写のテレビ番組『日本の奇祭』を4本を上映しました。本記事はその研究レポ記事となります。

 

開催のきっかけ

 『日本の奇祭』は、TVアニメ『星の子ポロン』の製作で知られる時報映画社が製作したとされる映画フィルムである。

 これまでこの作品の存在は全く知られていなかったのだが、国立民族学博物館さんのデータベースに掲載されているのが発見され、その存在が知られることとなった。そして交渉の末、国立民族学博物館さんの所蔵フィルムを元に上映会の開催に至ったわけである。

 

前情報

 先述の通り『日本の奇祭』は詳細不明なのだが、実はよく似たタイトルの作品がこれまでに発見されている。それが、TV番組『日本の祭り』だ。詳細は星の子ポロンまとめWikiに纏められているのでご覧頂きたい。1965年?版と1973年?版が確認されている。研究会の開催にあたってはこの作品との関連性が解明されるかという点もポイントとなった。

hoshinokoporon.wiki.fc2.com

 

研究成果

 国立民族学博物館さんには全部で26本(2クール分?)が所蔵されているのだが、今回はその中から「凶事流し―群馬県―」「オロチョンの火まつり―北海道―」「樺太アイヌのまつり―北海道―」「湖西の気狂いまつり―滋賀県―」の4本を選りすぐって上映した。ちなみにエピソードチョイスは以前Twitterで行った投票を元にしている。

 今回の上映は、資料保全のため、フィルムを直に流すのではなく予めテレシネ済のDVDを用いる形となった。更に、一緒に所蔵されていた台本(コピー)も閲覧することができた。

 

第2回「凶事流し―群馬県―」

内容メモ
映像上のクレジット

制作 間木浩
撮影 渡辺由宇
音楽 高橋陽
録音 ㈱読売スタジオ
現像 ㈱ハイラボセンター
タイトル協力 新潟県佐渡観光協会


構成演出 前田憲二
ナレータ 小川真司

台本

表紙

  • 企画製作 時報映画株式会社(住所は浜松町)
  • テレビ十五分カラー番組

台本

  • 手書き
  • 原稿は時報映画独自のもの
  • 下部に社名と住所記載(不明瞭)
  • 台本と実際の映像でナレの順番異なる箇所あり
  • 原稿の最後に「前」と思われるサインがある。恐らく前田憲二氏のものか?(→脚本は前田氏?)

 

第3回「オロチョンの火まつり―北海道―」

内容メモ
映像上のクレジット

制作 間木浩
撮影 渡辺由宇
音楽 高橋陽
録音 ㈱読売スタジオ
現像 ㈱ハイラボセンター
タイトル協力 新潟県佐渡観光協会


構成演出 前田憲二
ナレータ 小川真司

 台本

表紙

  • 企画製作 時報映画株式会社(住所は浜松町)
  • テレビ十五分カラー番組

台本

  • 第4回の予定が第3回に変更された模様(訂正?)
  • 手書き
  • 原稿は時報映画独自のもの 下部に社名と住所記載(不明瞭)
  • 実際の映像では原稿から台詞がカットされている箇所あり

 

第12回「樺太アイヌのまつり―北海道―」

内容メモ
  • 昭和49年4月に"ハルさん"が没したとのインタビューあり(→1974年4月以降の制作?)
  • アイヌの民族楽器ムックリ登場
映像上のクレジット

制作 間木浩
撮影 渡辺由宇
音楽 高橋陽
録音 ㈱読売スタジオ
現像 ㈱ハイラボセンター
タイトル協力 新潟県佐渡観光協会


構成演出 前田憲二
ナレータ 小川真司

 台本

表紙

  • 企画製作 時報映画株式会社(住所は浜松町)
  • テレビ十五分カラー番組

台本

  • 手書き
  • 横向き
  • 原稿用紙は汎用のもの

 

第15回「湖西の気狂いまつり―滋賀県―」

内容メモ
  • 義貞の訃報を聞いた妻が狂って入水自殺した故事に由来する祭り
  • 気違いの様相が高まってくる
  • 堅田
  • お盆を投げる
映像上のクレジット

制作 間木浩
撮影 村尾春雄
音楽 高橋陽
録音 ㈱読売スタジオ
現像 ㈱ハイラボセンター
タイトル協力 新潟県佐渡観光協会


構成演出 前田憲二
ナレータ 小川真司

※今回上映できた中ではこの回のみ撮影スタッフが異なる。

台本

表紙

  • 企画製作 時報映画株式会社(住所は浜松町)
  • テレビ十五分カラー番組

台本

  • 手書き
  • 横向き
  • 原稿用紙は汎用のもの

 

考察

時報ドキュメンタリー

実際の映像を視聴して様々な情報を得られたが、まずスタッフ情報が得られたのは大きな収穫だった。特に、構成演出の前田憲二氏の存在を知れたことは重要である。この方は現在も現役で活動を続けておられるのだが、実はインタビュー等で本作及び他の時報番組について言及されているのだ。以下に引用しよう。

私は若い時代に「日本の祭り」「日本の奇祭」等々、250本ばかりのテレビ作品を撮ってきた。日本の津々浦々を這うようにして番組を構成演出した。

求められる歴史認識の大切さ/「風を撮る」-洛中の「耳塚」を通して-前田憲二 | 朝鮮新報

1960年代後半から、日本各地や中国、朝鮮半島の祭りや芸能を追い続け、祭事を記録したテレビ・映画作品は250本以上におよぶ。
主に『日本の祭り』52本 『日本の奇祭』52本 『日本の集落』52本  『日本の石仏』26本 『わが旅・わが心』3本 他多数

講師紹介 ま行

本作だけでなく、他の時報番組も手掛けていたとは驚きである。一連の「日本の―」シリーズは前田氏によるものだったのだ。なお、「わが旅・わが心」はフジテレビの番組のようだが、時報が関わってるかどうかは不明である。

「日本の祭り」との関連性

前述の通り、前田氏によると『日本の祭り』と『日本の奇祭』は両者とも4クール分が制作されており、れっきとした別番組のようだ。

ちなみに、時報製『日本の祭り』は1965年頃と1973年頃の2番組があるようだが、回数から考えると前田氏が手掛けたのは後者ではないだろうか。
なお、前田氏は近い時期の1975年4月に「日本のまつり どろんこ取材記」という似たタイトルの書籍を出版している。未調査だが、時報番組と関係がある可能性がある。(→追記しました)

BGMについて

研究会では、作中で流れるBGMはライブラリー音源ではないかという意見が挙がった(→高橋陽氏は選曲を担当したのではないか?)。
ただし、高橋氏は本作以前の「眼球運動*メマイ」(桜映画社)で作曲を手掛けているため、本作でも作曲を担当している可能性も考えられる。

 

感想等

 

 

ひとまず今回の記事はここで締めたいと思う。
ますます奥が深くなる時報研究。まだまだ堀りがいがありそうだ…!

 

 

追記(2020年1月24日)

TATUさんに「日本のまつり どろんこ取材記」を調査していただいた。以下引用。